2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17144
沿岸海域の物質循環解析において,流動水質モデルの物質量の保存は重要な拘束条件である.再現性向上を目的にデータ同化手法を導入する場合,アンサンブル近似による逐次法は導入し易いものの保存性を確保できない一方で,変分法はAdjointコードの作成が必要なことから,頻繁に改良される低次生態系モデルに対してはほとんど適用されていない.そこで本研究では物質保存性を確保しつつ導入のし易いアンサンブル近似による汎用的な手法として,4次元アンサンブル変分法(4DEnVar)を領域海洋モデルROMSに実装し,東京湾を対象に気象観測衛星ひまわり8号による海面水温および定点観測された水温・塩分・クロロフィルa・溶存酸素データの同化実験を通じて4DEnVarの有用性を評価した.今後は各格子点や時間軸に拡張された大次元パラメータの修正に関する検討を進める.