2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17154
気候変動緩和機能は,海洋による大気CO2の吸収,吸収した炭素の生物生産による固定,固定した炭素の堆積物深部への貯留の3機能からなり,これら3機能は,大気-水-堆積物に渡る一連の物理・生物・化学過程に支配される.また,生物過程をつかさどる海洋生物は,酸性化により影響を受ける.本研究では,これらを機構的に把握し予測・評価する生態系モデルを東京湾に適用し,都市沿岸域において、RCP8.5シナリオの水温・大気CO2変化に基づき,現代から将来(2000~2100 A.D.)に渡る気候変動緩和機能の経年変化とその要因を解析した.その結果,(1)吸収は全アルカリ度(TA)の増加に伴い2040 A.D.以降増加,(2)固定は動物プランクトンの増加に伴い増加,(3)貯留は炭酸カルシウムの溶解に伴い2060 A.D.以降減少することが明らかとなった.