2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17171
海洋結合の有無を考慮した高解像度全球気候モデル群であるHighResMIP実験を対象に,熱帯低気圧(TC)の可能最大強度理論(MPI)を用いて,気候モデル毎に評価が大きく異なるTC強度の精度を評価し,さらに全球における海域毎の最大クラスのTC強度の将来変化予測を行った.HighResMIP実験のうち,MPIが計算可能な全30モデルの気候予測データを用いてTC強度を解析した.再解析値とHighResMIP実験の現在気候のMPIの空間パターンの一致を確認し,空間的平均誤差RMSEの逆数を重みとし,海域毎にモデル群のアンサンブル平均を施した結果,北西太平洋(WNP)及び北大西洋(NA)では,2050年までに最大940hPa程度にまでTC強度が強化されることがわかった.WNPでは多くのモデルで将来までに1~3hPa程度,TC強度が強化される一方,NAではその将来変化量がWNPと比較し約2倍となるモデルが47%存在することがわかった.