2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17176
本研究の目的は,衛星合成開口レーダー(SAR)データを活用して2023年2月6日に発生したトルコ・マラッシュ震災における沿岸域の被害分布の初期把握を行うことである.使用されたSARデータは,30m解像度にリサンプリングされた欧州の衛星Sentinel-1が撮影した2023年1月29日(地震前)と2023年2月10日(地震後)の2画像である.これらの地震前後の後方散乱断面積(NRCS)の差分画像から,地面の粗さの変動が大きかった地域と建物被害地域および周辺地質との関係を調べた.その結果,NRCS差分が大きい地域とMw7以上の強震域がよく一致していた.さらに今回のSARデータの差分画像では雪や雨の影響は小さく,地質的には未固結堆積物分布域で正の差分が増大した(地面が粗くなった)ことが分かった.