2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17179
東日本大震災で確認された大規模な津波火災は,今後発生が予想される津波災害においても発生が想定されており,それに伴う焼死リスクも懸念されている.津波火災の発生メカニズムやリスク評価に着目した研究が行われてきたが,津波火災と人的被害の関係は明らかとなっておらず,対策を講じる上での課題となっている.そこで本研究では,郵便番号地区ごとに記録された犠牲者情報に基づいて焼死犠牲者について分析した.その結果,焼死が確認されたのは局所的な6つの郵便番号地区のみであったことが分かった.また,津波火災の規模が大きい地区ほど焼死犠牲者率が高く,そのうち2つの地区では焼死が溺死よりも支配的な死因であった.これらの地区について考察すると,二次避難のしやすさが焼死犠牲者率に影響を与える要因の一つであることが示唆された.