2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18043
波浪等の海象観測が実施されていない国や地域では,経験に基づいたアドホックな海岸構造物が設計されている.しかし,現在,全球・領域レベルの詳細な海洋・海象情報が入手できるようになってきている.本検討は,このような代表例として観測データが乏しい,フィリピン国ダバオ市の海岸を対象として,各種大気・波浪解析データを海岸マスタープランの策定へ適用したものである.
長期波浪解析データをもとに,WAVEWATCH III–SWAN結合モデルによる波浪ダウンスケール計算を実施して,対象海岸の確率波浪を求めた.また,潮位観測の欠測期間を補完するために,大気再解析値をもとに高潮解析を実施して,確率潮位を求めた.これら,一連の解析結果から100年確率値を用いて計画道路護岸を評価した結果,一部の区間で天端高が打ち上げ高に対して不足することが分かった.さらに,本成果を2045年までのアクションプランを含む海岸マスタープランの策定に適用した.