2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18069
高潮・高波による浸水リスクの把握やその防災・減災対策の立案には,高潮・高波浸水解析を活用することが望ましいが,港湾近傍における波向を含めた波浪場の解析の計算コストの増大が実務上の課題となる.本研究の目的は,清水港における2019年台風19号の事象を対象に計算負荷が小さい波浪計算手法を組み合わせて,浸水痕跡を再現できる高潮・高波浸水解析手法を提案することである.また,浸水解析における波向の影響を明らかにする.波向の簡易推定法として提案した見通し角度はブシネスクモデルによる入射波向を概ね再現することを確認した.見通し角度を高潮・高波浸水解析に考慮したところ,ベクトル分割の方法が浸水の痕跡範囲を最も良く再現することを確認した.本研究の手法は,実務における高潮・高波による浸水解析に対して有益な知見となる.