2023 年 79 巻 22 号 論文ID: 22-22012
音波を用いた水中測位における課題の一つとして,浅海域や港湾部における多重反射(マルチパス)環境における欠測の発生や大きな誤差の存在がある.我々は不要な反射波を排除する信号フィルタリング技術を有する新しい「耐マルチパス水中音響測位技術」を構築してきた.この技術は,空間上のある領域に音源が存在する場合,音源から各受波器までの伝搬時間を予め計算機上で求めておき,該遅延時間前後のインパルス応答のみを抽出することで,マルチパス環境でも三角測量に必要な基線長を安定かつ精度良く測定するものである.本稿では,提案手法の性能を移動体環境で評価した.マルチパス環境である大型プールで,船底に音源を設置したボートを移動させながら,その位置をリアルタイム測位した.その結果,移動体の測位平均誤差は0.12~0.24m,欠測率は0%であった.