2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25011
降雨・流出や下水・排水処理水の放出の時間変動パターンの変化は,それらから栄養塩を受ける沿岸海域の一次生産の量のみならず質にも影響すると考えられる.本研究では,珪藻種Skeletonema marinoi-dohrniiを対象に,同量の無機態窒素・リンを短期集中(pulse)的と低濃度・継続(press)的にそれぞれ供給する連続培養実験を行った.その結果,pulse系では,珪藻細胞の生産量が顕著に高く,同時に明確な生産・死滅サイクルがみられた.また,pulse系の珪藻は必須脂肪酸含有量が相対的に高かったのに対して,press系の珪藻は一部の飽和脂肪酸や単価不飽和脂肪酸の含有量が高く,貧栄養環境に適応した結果と考えられた.