2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25012
下水処理場の受水域である琵琶湖流出河川水の瀬田川での溶存態有機物(DOC)濃度,蛍光性溶存態有機物(FDOM)のうちタンパク質様成分FDOM-Pのスコア値,全蛍光成分FDOM-Tのスコア値(生物由来フミン様成分,陸域由来フミン様成分,FDOM-Pのスコア値の合計),FDOM-P/DOC,及びFDOM-T/DOCの経時変化を,下水処理場の簡易処理放流の発生前後で調査した.下水処理場からの簡易処理放流量と河川流量の比率(下水混入率)とこれら5つの溶存態有機物指標の絶対値や時間変化量の関係を整理し,溶存態有機物指標の閾値を設定することで,放流先河川地点で簡易処理放流の発生を検出するのにどれが有効なのかを,二値分類によるクラス分類である混同行列を用いて評価した.その結果,この河川地点での簡易処理放流発生の検出には,全蛍光成分FDOM-Tの絶対値の正解率,F値が5つの溶存態有機物指標の絶対値や時間変化量の中では最大であるため,最も有効であることが示された.