2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25020
千葉県習志野市に位置するラムサール条約登録湿地である谷津干潟では,夏季に異常繁茂したアオサ(Ulva spp.)の腐敗により底泥が嫌気化し,干潟生態系における低次消費者として,また飛来する渡り鳥の餌資源として重要なマクロベントスに影響を及ぼしている.しかし,腐敗アオサからの溶出水および腐敗底泥の間隙水が干潟の生態系機能に及ぼす具体的な影響は未知数である.本研究では,模擬生態系であるマイクロコズムを用いたWET試験により腐敗アオサ溶出水および腐敗底泥間隙水の生態系影響および環境毒性のエコシステムレベルでの評価解析を行った結果,腐敗アオサ溶出水および腐敗底泥間隙水はいずれも5%以下の低濃度でも微生物生態系に負の影響を及ぼすことが示された.腐敗底泥間隙水(夏季)と底泥間隙水(冬季)の比較において,評価に差はみられなかった.