2023 年 79 巻 27 号 論文ID: 23-27003
既往の魚道研究では遊泳魚が主な対象魚種となっており,ウナギ等の底生魚を対象にした研究は遊泳魚ほど多くない.そのため,ウナギ用魚道の適切な幾何学形状や水理条件に関して不明な点が多い.現在,ウナギ用魚道の底面素材としてブラシ束,立体網目状マット,粗石および円柱突起物の有用性が認められているが,さらに全長110mm以上のウナギについて,流量を変化させて底面素材の相違による遡上特性の変化を調査する必要がある.本研究ではウナギ用魚道の底面素材を上記の4種類に変化させるとともに流量を変化させ,ニホンウナギの遡上状況を比較した.その結果,ブラシ束を用いた場合は遡上率および遡上成功率が最低値を示した一方,円柱突起物を用いた場合は両率が高い値を示した.後者においては,ニホンウナギが遡上中に躯幹を円柱に巻き付けながら休憩できるため,流出しにくい状況であった.したがって,上記4素材の中では,ニホンウナギの遡上に最適な素材は円柱突起物である.