土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号(地球環境)論文
市区町村スケールの脱炭素シナリオにおける合成燃料の導入可能性の検討 ―北海道釧路市を対象として―
伊藤 悠太白木 裕斗
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2023 年 79 巻 27 号 論文ID: 23-27038

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抄録

 本研究は,合成燃料の利用と地域の特性を考慮したエネルギー技術選択モデルを用いて,2050年カーボンニュートラルを実現する北海道釧路市のエネルギーシステム像を明らかにした.分析の結果,対策を実施しないシナリオでは,2050年のCO2排出量は2015年比61%減となること,気候変動緩和策を講じた場合でも,合成燃料を利用しなければ2015年比80%削減に留まることが示された.具体的な緩和策としては,家庭部門における太陽光発電の導入,産業部門における液化石油ガスへの代替,運輸部門の電化の促進が選択された.加えて,残存する液体・気体燃料需要を合成燃料で代替することにより,2050年カーボンニュートラルが実現可能なことが示された.他方,合成燃料の大規模な導入には,追加的な費用が生じる結果となった.液体・気体燃料需要が残る可能性がある寒冷地や産業集積地の脱炭素化を合成燃料の導入によって進める場合,合成燃料の製造コストの削減が重要と考えられる.

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