2024 年 80 巻 1 号 論文ID: 23-00022
我が国の無償資金協力事業における入札不落発生要因について予定価格と応札価格の乖離にはJICAの採用する積算基準の精度よりも無償資金協力事業の契約形式や制度が大きく関わる可能性が示唆された.そこで本稿では積算精度以外に予定価格/応札価格の乖離に関わっていると推定される契約約款に記載されている事項と業務遂行実態の違いに着目し要因を分析した.その結果,総価契約方式によりリスク対応費を適切に積上げられない事,入札時における詳細施工計画確認の難しさ,契約変更過程の契約条項と実務上の運用の差異といった要因が挙げられた.入札不落率を低減させるためには予定価格の積算精度を高めることは勿論,適正な契約形態や契約約款によりコンサルタント,コントラクターのリスクをいかに低減できるかが重要である.