2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15014
腐食した鋼管部材の補修方法の一つとして,炭素繊維強化樹脂(CFRP)を接着する補修方法が注目されている.鋼管の全周に溝状の断面欠損を補修する場合には,欠損部における鋼管と CFRP の分担断面力は完全合成断面とした計算値と比べ,補修効果が低下することが載荷試験により確認されている.これは,接着剤による力の伝達に起因すると考えられる.CFRP 接着接合では,接着剤の力を伝達が評価できるせん断遅れ理論が提案されているが,断面欠損を有する鋼管部材を対象とした理論解は与えられていない.本研究では断面欠損を有する鋼管に CFRP 接着補修した場合を対象として,せん断遅れ理論による分担断面力を導出した.導出した分担断面力の理論解は,有限要素解析による軸対称解析や載荷試験の結果とおおむね一致した.