2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15040
降雨後の斜面安定性の評価において地盤内の水分変動を定量化するためには,地表面での水分流束の境界条件である蒸発量を把握することが重要となる.本論文では,蒸発量推定方法の一つであるバルク法に着目し,その未知パラメータである蒸発効率の算定方法について,自然対流の条件下を対象に検討した.はじめに,蒸発効率の算定に必要な交換速度を熱力学的観点から考察し,土と水の熱容量の違いを考慮した新たな交換速度の算定方法を提案した.次に,室内での蒸発実験から,提案法で得られた交換速度を用いて蒸発効率を算定し,その妥当性と適用性を評価した.その結果,提案法を用いると,蒸発効率が定義域を満たす 1 以下の値として算定できることを確認した.併せて,実験の初期条件による蒸発効率への影響を排除するためのデータ整理手法を示した.