2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16070
世界規模で進む地球温暖化に加え,日本では深刻な人口減少と高齢化が進行している.将来の気候変動による洪水規模の拡大が想定される一方で,高齢者は災害に対して脆弱であるため,高齢者の割合の増加は洪水による犠牲者数の増加につながると考えられる.こうした気候変動と高齢化による人的被害を増加させる効果と人口減少による人的被害を減少させる効果をすべて考慮したときに,人的被害の規模は現在と比べてどのように変化するか調査した.秋田県の雄物川流域を対象として,将来洪水による人的被害を推計した.その結果,将来の予測では人口が著しく減少するにもかかわらず,洪水規模の拡大や高齢化の進行によって犠牲者数は現在よりむしろ増加する可能性が高いと予測された.