2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16132
標高データと地表水の流下方向を示す表面流向データは,流域水文過程の解析に有益な基礎データである.従来の表面流向は,窪地補正された標高データに基づいた最急勾配によって決定される.しかし,最急勾配では,標高補正手法や標高データの誤差に影響され,現実の河川形状に即した表面流向を構築できない.そこで本研究では,実河道情報を基に,標高補正の最小化と河川形状の再現性向上を目的とした落水線図作成手法を開発した.結果として,30m~1000mの複数空間解像度において,河川位置と流向の再現性が大幅に向上し,標高補正を低減できた.また,従来手法では困難であった小流域や湾曲度の大きな蛇行も再現できた.本研究の落水線図作成手法は,流域治水や広域の河川環境管理,デジタルツインを活用した防災等への貢献が期待できる.