2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16142
現業の数値気象予報モデルの更新が,長時間アンサンブル降水予報を利用したダム事前放流操作判断の精度に及ぼす影響を分析した.予報発表時期が重複する更新前後の二種類の気象庁週間アンサンブル予報モデルを対象に,事前放流に関わる予報誤差特性の分析と,ダム操作の長期シミュレーションを通じた事前放流操作精度の比較を行った.モデルダム貯水池を対象に分析を行った結果,更新後のモデルの予報を考慮する場合では,事前放流量をより大きく算定できる傾向があり,結果として大規模出水時の治水効果が大きくなる可能性が示唆された.一方で,いわゆる事前放流の空振りや見逃しについては抜本的な改善が見られず,利水・発電面ではむしろ更新前のモデルの予報値を考慮する方が優位である傾向が示された.