2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16197
全球降水量分布の推定は,世界の災害予測や水資源管理に不可欠である.本研究では,アンサンブルデータ同化に基づき,地上雨量計観測から全球降水量分布を推定する新たな手法を提案する.具体的には,欧州中期予報センターの再解析降水量を用いて第一推定値と背景誤差共分散を構築し,同化観測数制限等の最先端のデータ同化手法も併用することで,全球降水量分布を推定した.推定の入力値とは独立の地上雨量計観測を用いて検証した結果,米国海洋大気庁の既存プロダクトと比較してより高精度な降水量分布が得られることが示された.その主要因は,再解析データから背景誤差共分散を求めることで,各地点の誤差分散や,地点間の誤差共分散が改善されたことだと考えられる.更に,推定手法に同化観測数の制限を課すことが降水分布の精度の向上に寄与した.