2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17046
本研究は愛知県の三河湾および5水系を対象に,計30ケースの2019年台風19号の経路アンサンブルをもとに暴風・大雨による高潮・洪水の同時生起性に関する数値実験を行った.その結果,三重県東部を北上する特定の経路で最大高潮は1.96m,2.16m(満潮時)となった.この経路は高潮と洪水のピーク時刻差(∆T)が短く,全5水系の平均∆Tは48分であり,特に中小3水系の河口で同時生起条件が得られた.また,中小河川では台風中心と河口の距離に比例して∆Tが増加するが,大河川は台風経路に依らず∆Tは大きいことがわかった.想定台風の最大風速半径は70-105kmであり,中小河川ではこの範囲内に流域の大半が含まれていた.その結果,大雨・暴風の影響を受け,高潮・洪水の同時生起となったと考えられる.