2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17110
本研究は,領域海洋モデルROMSで再現された東日本南岸海域の全域から放流したラグランジュ粒子を追跡し黒潮や沿岸地形が影響する物質輸送過程の評価を行った.本手法は一般的な特定の領域から放流した粒子追跡手法とは異なり,領域全域に粒子を初期配置することで再現海域全体の物質輸送過程が評価可能となる.放流した粒子は,黒潮や渦のフロントを境界に強く引き伸ばされるように拡散し,強い方向依存性を伴った拡散過程を示した.この方向依存性は沿岸域から黒潮流軸までの海域で見られ,東西方向の水平拡散係数は南北方向に比べ5~10倍程度大きい値を示した.一方黒潮流軸以南の海域では,等方的な拡散が発生しており季節的な依存性が強く,冬季の水平拡散係数は夏季に比べ1オーダー倍程度強いことがわかった.