2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17111
内湾環境を強く支配する水温場に対する外洋影響を定量的に評価するために,3次元海洋流動モデルを用いて黒潮流路変動に伴う大阪湾・伊勢湾・駿河湾・相模湾・東京湾への黒潮系水塊の波及効果を解析した.潮汐や河川の影響を排除し,各湾口断面を通過する熱フラックスを求めることで海流などによる各湾への外洋影響を抽出した.各湾口での熱交換には,季節変動成分を主体する平均熱フラックス(MHF)が渦成分よりも支配的であり,相模湾以東では黒潮本流から分岐した暖水が大島西水道を通って直接波及し,黒潮接岸期にMHFが強化されることで流路変動と強く相関していた.一方,大阪湾〜駿河湾では地形に拘束された水平循環流によって波及効果が弱化し,また,各湾の閉鎖度によって内湾への熱流入・流出傾向に差が生じるなど重要な知見を得た.