2024 年 80 巻 20 号 論文ID: 24-20092
日本では,低インフレによるGDPなどの劣化が長く続いている.しかし,それらに伴う社会的政治的指標の劣化に関しては,言及されることが少なく,その過小評価によってデフレ対策が不十分である可能性がある.本研究では,低インフレ持続による経済・社会・政治の連鎖的劣化をデフレ現象と定義した上で,その多面的で連鎖的な影響を明らかにすることを目的とし,デフレ現象の理論的整理を行った.これにより「緊縮財政に伴うデフレ傾向は,貧困格差拡大,それに伴う国民の公共性下落も招き,政治腐敗に立ち返る.デフレ傾向は,同時に一極集中等社会問題も増大させ,連鎖的に国民の幸福量が低下する.こうした負の流れが循環する.」という,デフレ現象の全体像についての仮説を提示した.加えて,その基礎的な検証によりその一部が統計的に支持された.