2024 年 80 巻 20 号 論文ID: 24-20107
氾濫域における洪水を考慮した住まい方の実装には,日常の暮らしやすさと洪水被害の軽減のバランスが重要になる.その知見を得るために,水塚を有する住宅の母屋に着目し,センチ単位の標高測量により母屋や水塚の高さの特徴を考察した.その結果,水塚・母屋ともに対象地域での標高のばらつきが小さいこと,3 〜 4m 嵩上げされる水塚に対し母屋はその半分程度であること,敷地立地面と母屋の高低差が 1.3m を超えると敷地の高さを分割するように庭・納屋が設けられることを示した.すなわち母屋はときおり浸水する高さに設けられており,水塚という避難空間,母屋という生活空間,納屋や庭という生業空間の使い方に応じた宅盤高さが丁寧に設定されてきたことを指摘した.