我が国の公共工事における設計積算システムの改善に関する研究

抄録

　公共工事の予定価格設定は，工事目的物の要求性能を満たすための費用に加え，受注者の適正利益を確保することが重要である．しかし，設計図書と現場の不整合や現場と乖離した発注者積算が大きな課題として挙げられている．本研究は，我が国の発注者積算を代表する国土交通省の設計積算に焦点をあて，応札者の見積りと発注者積算の関係，積算基準書が設計に及ぼす影響を分析した．その結果，高度技術を競うトンネル工事やダム工事においても，調査基準価格直上狙いの“価格当て競争”が起きていることが確認された．また，積算基準書に掲載された工法の選定が優先される例もみられた．この改善方策として，柔軟性を持った積算基準の活用方法を検討し，新技術を含む様々な施工方法に対応可能で，施工の安全性並びに受注者の適正な利益を確保できる積算手法を提示した.