2024 年 80 巻 24 号 論文ID: 24-24006
令和2年7月豪雨により熊本県人吉市では大規模な浸水被害が発生し,全世帯の約19.2%が何らかの住宅被害を受けた.また避難所における新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念され,避難所の量的確保が必要となったことから被災者(要配慮者)を対象とした宿泊施設としての活用が求められた.しかし人吉市内の宿泊施設の多くが被災したことや被災しなかった宿泊施設も受け入れ可能な施設は2施設のみとなったことから熊本県及び人吉市は営業を停止していた計4つの宿泊施設に公費による応急補修を施し,避難所として被災者を受け入れることを試みた.本研究では,応急補修関連事業の全体像を把握し,行政機関,宿泊施設,被災者の視点から利点や課題を整理した結果,被災者による宿泊施設の利用数は見込みより低い結果となったが,避難者に対して良好な避難環境を提供できたことや宿泊施設が応急補修と被災者の受入れにより早期の事業再建と事業の継続に結び付くという副次的な効果を得ていたことが明らかとなった.宿泊施設が災害時において事業を再建・再建できることは,長期的な視点においてその地域の復興にもつながり,宿泊施設を避難所として活用することに関する理解や周知活動が重要であることが示唆された.