2024 年 80 巻 25 号 論文ID: 24-25021
近年,環境DNA(eDNA)を利用した水生生物多様性調査が行われているが,eDNAの挙動には未解明な点も多い.そこで,本研究では,魚類アユ(Plecoglossus altivelis)と底生動物(Stenopsyche marmorata)を対象としてeDNA濃度の時間変動を調査した.その結果,アユのDNAは1日を通して検出できたのに対し,ヒゲナガカワトビケラのDNAは夜間から朝にかけてのみ検出された.これは,ヒゲナガカワトビケラの生態と関連していると推察された.また,一般的なeDNA分析に用いられる孔径(0.65µm)よりも小さい孔径(0.20µm)のフィルターでろ過を実施することで,ヒゲナガカワトビケラのDNA検出頻度が高まった.効果的なeDNA分析を行う際には対象種の生態に合わせた採水戦略を検討する必要がある.