2024 年 80 巻 27 号 論文ID: 24-27003
農業・森林・その他土地利用変化(AFOLU)部門由来の温室効果ガス(GHG)排出量は2019年の世界の人為的なGHG排出量の22%を占めており,特に途上国ではAFOLU部門由来のGHG排出が占める割合が比較的高いため,途上国での排出削減に重要な役割を果たす.アフリカ地域のGHG排出は現在,世界全体の9%を占めるが,今後の人口増加や経済成長を考慮すると,今後重要な地域になりうる.しかし,農畜産業部門由来の排出削減についてアフリカ地域を対象とした国レベルの分析は非常に限られる.そこで,本研究は農畜産業排出評価モデル(AFOLUB)を用いて,アフリカ52か国を対象に各国レベルで農畜産業由来の排出削減可能ポテンシャルを明らかにした.その結果,GHG排出削減技術を導入した場合,GHG排出量は対象国全体で2050年に330MtCO2eq/年(同年対策なし排出量比26%)削減可能であり,そのうち削減可能量上位10か国が対象国全体の削減可能量の64%を占めた.そのうち多くの国で“生産性が高い家畜種への変更”が有効な削減技術となることが示された.