2024 年 80 巻 27 号 論文ID: 24-27040
地球規模の複合的な環境変化によって衰退しているサンゴ礁生態系の保全・再生に向け,サンゴの生息に影響があるとされる海域のリン酸を低減することを目的に,石垣島轟川流域の農地土壌のリン含有の現状を調査・分析するとともに,点源負荷である畜産排せつ物の適切な処理,堆肥化,その利用による面源負荷の低減に関する要因連関構造分析を行った.その結果,pHが高い土壌,リン酸吸収係数が低い土壌,サトウキビ夏植栽培や株出栽培の一部の土壌,堆肥舎近くからリンが流出しやすい可能性があることが示唆された.さらに農業系のリンの域内循環を促すためには,畜産排せつ物の回収,堆肥化促進,堆肥活用や堆肥のマーケットの拡大,環境にプラスとなる農業への転換などのアウトカムを達成する複数のアクティビティが必要であることが明らかとなった.