2025 年 81 巻 10 号 論文ID: 24-00053
本研究では,筆者らの先行研究で開発した地域別将来患者数予測モデルを改良しつつ全国の市区町村に適用し,交通基盤整備と医療機関維持政策に関するシナリオ分析を行い,その結果に基づく政策提案を行う.まず,人口ピラミッドの変化に基づく少子高齢化シナリオにおいては,今後医療需要の減少により,多くの地域で病院の撤退が起こるという予測結果を示す.次に,このトレンドに対する政策的な対応として,[i] 公立・公的病院の維持と [ii] 交通基盤整備(高規格幹線道路網計画14000kmの完成)の効果について分析した.その結果,交通基盤整備を先行的に実施した場合,医療機関の都市部への集中が加速する可能性があるため,交通基盤整備は地方部の医療機関維持政策と同時に行う必要があるという示唆を得た.