土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
81 巻, 10 号
通常号(10月公開)
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
構造工学,地震工学,応用力学
報告
  • 南 邦明, 木村 健太郎, 横山 秀喜
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00007
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     電炉鋼はカーボンニュートラルに資する材料であり,近年,その活用が再注目されている.整備新幹線の建設工事において,橋梁部材での電炉鋼の適用実績はないが,鋼製緩衝工やスノーシェルターあるいは鋼製防音壁などでは,これまで数多くの電炉鋼を適用してきた.ただし,電炉鋼の機械的性質を十分把握しておらず,また統計的な整理も行っていなかった.本報告は,整備新幹線の建設工事で使用した電炉鋼の鋼材検査証明書から,広幅帯鋼,広幅平鋼,H形鋼,山形鋼,溝形鋼および平鋼(Flat Bar)における機械的性質(降伏点,引張強さ,伸び,降伏比)を調査した.また高炉鋼も調査し,電炉鋼との比較を行った.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 門脇 大典, 中谷 祐介, 甲斐 達也
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00172
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     河川浮遊ごみの実態把握には効率的かつ高精度な検出技術の確立が重要であり,その実現には量・質ともに充実した学習データが不可欠である.本研究では汎用性の高い観測手法の開発を目指し,生成AIであるStable Diffusionを用いて浮遊ごみのダミー画像を作成し,物体検出モデルの学習データ拡張として活用する手法の有効性を検証した.タグ設定,学習手法,学習回数が浮遊ごみ画像の再現性に及ぼす影響を評価し,最適な生成条件を整理した.さらに,実際の観測画像を用いて生成モデルに追加学習を施すことで,再現性の高いダミー画像を作成できることを示した.この調整モデルによる生成画像を用いて物体検出モデルYOLOを学習させた結果,少ない学習枚数でも高精度な検出が可能であることが確認され,提案手法の有効性が示された.

地圏工学
論文
  • 太田 大希, 西村 伸一, 柴田 俊文
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00251
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     パイピングは,越流と並んで,河川堤防破堤やため池堤体の破壊を引き起こす主要な原因の一つである.本研究ではパイピング危険箇所を特定するために,サウンディング手法の一つである電気式コーン貫入試験(Cone Penetration Test with pore pressure measurement, CPTu)を用いる.CPTu結果(先端抵抗𝑞𝑡,周面摩擦𝑓𝑠,間隙水圧𝑢)と土質分類指数𝐼𝑐から透水係数を推定するために,CPTu模型実験を実施した.CPTu終了後,同じ供試体からサンプリングを行い,透水試験を実施し,関係式を導出する.関係式を実際の調査地のCPTu結果に適用し,現地の透水係数を求めた.その透水係数を基にガウス過程回帰(Gaussian Process Regression, GPR)を用いて統計モデルを構築し,透水係数の空間分布を推定することができた.

  • 久河 竜也, 浦越 拓野, 河村 祥一
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00058
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     剥落型落石は,割れ目を境に岩盤から岩石が落下する現象であり,割れ目の進展性を評価できれば,落石災害対策の検討に資する.本研究では,常時の気象変化による岩石中の割れ目の進展性を評価する手法の提案を目標に,気象変化を模擬する温度変化や湿度変化を岩石供試体に与えた際の変形特性を把握する試験と,割れ目を模擬する切欠きを設けた岩石供試体に乾湿繰返し作用を与えた際の割れ目の進展を把握する試験を実施した.試験結果を踏まえ,気象条件変化による岩石の変形の予測式,及び乾湿繰返しに伴う応力変動による割れ目の進展速度の予測式を構築した.これらの予測式の組み合わせにより,気象変動データから割れ目の進展性を評価するモデルを作成した.さらに,作成したモデルに基づく計算結果を,過去の剥落型落石発生時期のデータと比較した.

  • 寺中 吉輝, 岡 滋晃, 高橋 秀明, 中谷 登, 譽田 孝宏, 中井 照夫
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00071
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     二次元平面ひずみ条件における直接基礎の支持力および地盤の変形問題については,遠心模型実験や有限要素解析は行われているが,根入れのある直接基礎の三次元場での実験や解析による検討をした事例はほとんどない.本研究では,根入れのある直接基礎の三次元場における支持力・変形特性の解明を目的に,遠心模型実験と対応する弾塑性有限要素解析を実施した.その結果,地盤の材料特性を適切に評価した有限要素解析の結果は,二次元場および三次元場の基礎の荷重~変位関係を包括的に説明できるとともに,地盤内の変形特性における二次元場と三次元場の違いを表現できた.地盤材料の中間主応力や拘束応力,ダイレイタンシーの影響を適切に考慮した構成則を用いることで,地盤の支持力問題の解析で現実的な結果を得ることができることを確認した.

  • 松田 圭大, 川端 伸一郎
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00094
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     凍結深さの推定に必要な確率凍結指数の合理的な算定法について検討した.一般に設計に用いる凍結指数は,年変動を考慮するため頻度解析による確率凍結指数が用いられる.しかし,凍結指数の変動特性は地域性が強く,単一の確率分布で表せないことから,確率分布関数を使用しない簡易な算定法を提案した.また,データ期間が凍結指数に与える影響を調べ,解析に用いるデータ期間としては直近30年分が最適であることを示した.さらに,凍結指数の標高補正に用いる気温減率を原位置での実測から求め,従来から設計に利用されてきた0.5℃/100mを改め,0.6℃/100mに修正することを提案した.

土木計画学
論文
  • 柳川 篤志, 白水 靖郎, 藤井 聡
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 22-00017
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     地震災害のような巨大災害による被害は空間的・時間的影響範囲が広範に亘るため,何をもって災害被害と定義するか,で被害期間や被災額大きく変わり,直接的な被害だけでなく復興プロセスも間接的な被害に影響している.本研究では,発災から十分時間が経過した阪神・淡路大震災に注目し,その復興プロセス(リカバリーカーブ)を合成コントロール法と平均値法の2つ手法で推計した.

     その結果,阪神・淡路大震災の被害期間は約20年にまで及び,その被害額は合成コントロール法において兵庫県全体で約44兆円,平均値法において被災地エリアで約27兆円,兵庫県全体で約30兆円になり,復興プロセスには長期の時間を要するという結果が得られた.

  • 小池 淳司, 大谷 修一郎, 氏家 魁人, 瀬谷 創
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00053
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,筆者らの先行研究で開発した地域別将来患者数予測モデルを改良しつつ全国の市区町村に適用し,交通基盤整備と医療機関維持政策に関するシナリオ分析を行い,その結果に基づく政策提案を行う.まず,人口ピラミッドの変化に基づく少子高齢化シナリオにおいては,今後医療需要の減少により,多くの地域で病院の撤退が起こるという予測結果を示す.次に,このトレンドに対する政策的な対応として,[i] 公立・公的病院の維持と [ii] 交通基盤整備(高規格幹線道路網計画14000kmの完成)の効果について分析した.その結果,交通基盤整備を先行的に実施した場合,医療機関の都市部への集中が加速する可能性があるため,交通基盤整備は地方部の医療機関維持政策と同時に行う必要があるという示唆を得た.

  • 佐々木 武志, 佐藤 啓輔, 吉野 大介, 片山 慎太朗, 小池 淳司
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00124
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     災害リスクの高いわが国において,災害時の移動や物資輸送等を支える道路ネットワークは重要な役割をもつ.一方で,現行のわが国の道路事業評価では,その役割が十分に評価されているとは言えない.そこで本研究では,道路事業評価で便益に計上されていない防災面の効果の貨幣換算を目的に,道路ネットワークの存在によって災害時の移動や物資輸送が維持されることで,災害に対する不安感が軽減する効果を便益として計測した.分析にあたっては,災害時の自身の移動にかかる時間に対する支払意思額をコンジョイント分析で推定し便益を計測した.更に,他者の災害時の移動時間に対する支払意思額についても推定を行い,災害時の不安感軽減に資する道路事業における利他的支払意思の存在についても検証した.

  • 山田 順之, 小池 淳司
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00131
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     我が国の国土政策は国土の均衡ある発展を目指して進められてきた.しかし,都市への人口集中とその反動として地方の人口減少と縮退が続いており,教育や医療福祉サービスへの公平なアクセス性が大きな課題となっている.一方,このような居住地域ごとのアクセス格差の是正を目的として,近年X-Minute Cityの概念が世界中で広がりを見せている.これは,住民が必要な施設やサービスにX分以内に到達できるインフラ整備などを進める政策であり,都市から国レベルまで多様なスケールで検討されている.本研究では,既往研究からX-Minute Cityへの取り組みを分析し課題を整理した上で,地域の隔たりなく教育や医療へのアクセス性を確保し,国民の基本的権利を尊重した国土政策の推進に有益となる施策や枠組みを新たな視点で検討・提案する.

  • 中村 太一, 石橋 知也
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00180
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     国土交通省は,全国の大多数の都市公園において,大幅な更新作業が必要となると指摘し,都市機能の向上に着目した都市公園ストック再編の推進等の対応策を打ち出した.長崎市横尾地区では,公園施設の老朽化や少子高齢化により,利用者ニーズに施設の機能が適さなくなってきたことを受け,同地区9公園の機能や設備の再整備を計画している.本研究では,長崎市都市公園ストック再編事業を対象に,参与観察により,再整備案の策定に係るワークショップや協議等のプロセスを詳述し,複数公園を一体的に再整備する観点での議論の要点や,課題等を抽出した.その結果,ワークショップを開催するうえでの緻密な準備の必要性,公園づくりに対する参加者の意識変容,公園全体に関する議論の工夫の重要性,一体的検討による各役割の把握のしやすさ,を指摘した.

  • 梅田 涼央, 吉崎 靖昌, 奥岡 桂次郎, 髙木 朗義
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00192
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,地域社会におけるスポーツの役割に期待が寄せられている中で,トップスポーツチーム連携組織が相次いで発足されている.これらの組織が地域に与える影響は大きいと期待できるが,その価値や意義は明らかにされていない.本研究では,GIFUNITEという組織に着目し,その社会的な価値を社会的インパクト評価によって明らかにした.まず,ロジックモデルを作成することで,成果をより効果的に評価できるようにした.次に,アンケート調査を行い,CVMを用いることでGIFUNITEが生み出す便益を算出し,アウトカムの定量化を行った.その結果,GIFUNITEは岐阜県民の岐阜県への愛着の増大に最も寄与していることが明らかとなった.また,県民に現地観戦や運動する機会を与える取り組みを進めることで,GIFUNITEが地域に与える社会的インパクトをより一層拡大できることが示された.

  • 阿部 俊彦, 益子 智之, 牧田 竜明, 寶珍 宏元, 金 度源
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00226
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,我が国の都市・地域における自転車利用は,環境負荷の低減や健康の増進,観光資源の開発に寄与する点において注目されている.滋賀県では「ビワイチ」と呼ばれる琵琶湖の湖畔のルートが国土交通省に認定されているが,今後,琵琶湖周辺の湖畔景観の特性を活かしつつ,自転車利用者の年齢層や性別で異なるニーズに対応した自転車走行空間の整備が求められている.本研究では,琵琶湖湖岸地域における自転車走行空間の景観要素が走行速度に及ぼす影響,及びそれらの関係性を明らかにすることにより,魅力的な自転車走行空間に資する景観要素とその空間の整備に資する知見を得ることを目的とする.

  • 瀬木 俊輔, 岩﨑 太志
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00064
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,トリップチェイン全体の効用を最大化する旅行者の意思決定を明示的に表現した,新たな観光周遊行動モデルを提案する.提案モデルは,オリエンテーリング問題に類似した構造に,旅行者の異質性を表す誤差項を導入することにより,トリップチェインの選択確率を定義可能にしたものである.本研究は,提案モデルに従うトリップチェインを求めるためのヒューリスティックアルゴリズムと,モデルに含まれる未知パラメータの推定手法も開発する.さらに,訪日外国人流動データであるFF-Dataに対して提案モデルを適用し,パラメータ推定とモデルの妥当性の検証を行った.その結果,提案モデルは,近視眼的なNested Logitモデルと比較して,観測データへの高い適合度を示すことが確認された.

建設材料と構造
論文
  • 中村 光, 上田 尚史, 三浦 泰人, 山本 佳士
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00286
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,繰返し荷重を受ける RC 部材の内部のひび割れ進展挙動と鉄筋の座屈メカニズムを明らかにすることを目的として実験的な検討を行った.所定の繰返し作用を与えたRCはりを切断することにより,曲げひび割れ断面位置の軸方向鉄筋近傍において鉄筋軸方向に沿った水平方向のひび割れが発生・進展することを明らかにした.この水平方向のひび割れは,±2δy程度の小さな変位レベルで発生することを確認した.また,水平方向のひび割れの進展により,軸方向鉄筋の座屈に対するかぶりコンクリートの拘束力が低下し,鉄筋の座屈が生じやすくなるとする,新たな座屈メカニズムを提案した.さらに,水平方向のひび割れの進展と拡大を抑制することにより,横方向鉄筋を用いずとも軸方向鉄筋の座屈を抑制できることを示した.

  • 何 宗耀, 相内 豪太, 前島 拓, 石川 雅美, 岩城 一郎
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00126
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,フライアッシュと膨張材を併用した連続鉄筋コンクリート舗装の膨張収縮挙動を評価可能な解析モデルの構築を目的として,三次元有限要素解析により検討を行ったものである.まずフライアッシュと膨張材を併用した実規模モデルから計測したコンクリートの温度およびひずみ挙動データと設計条件および環境条件を入力値とした本モデルの解析結果について比較検討した.次に,本モデルの実用性について評価するため秋田県内の直轄国道で実施工したフライアッシュと膨張材を併用した高耐久連続鉄筋コンクリート舗装についても同様に解析結果との比較検討を行った.その結果,構築したモデルは,本舗装の優れた膨張収縮挙動とひび割れ抑制効果を再現可能であり,実際の現場での施工段階におけるひび割れ解析に適用可能であることを明らかとした.

土木技術とマネジメント
論文
  • 澁谷 宏樹, 小澤 一雅
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00114
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     変化の激しいビジネス環境の中で迅速にソフトウェアを開発する手法としてアジャイル開発が注目されている.本研究は,睦沢SWTを対象に,システム開発担当者が特定少数の現場チームと連携を図りながら,3ヵ月間でFM支援用IoTシステムの内製開発をアジャイル的に実践したプロジェクトの効果を評価することを目的とした.このプロジェクトのプロセスを,アジャイルソフトウェア開発宣言から抽出したアジャイル度や,費用,関係者の意識などの観点から評価した結果,開発者と現場チームがスムーズに連携でき,合理的な予算でスピーディにリリースでき,室内環境の品質向上や空調の省エネ効果を確認できた.さらに,開発後に現場チームからICTを活用したいという要求がみられ,現場チームのICTへの関心向上といった効果も確認できた.

  • 高尾 篤志, 矢吹 信喜, 宮田 岩往, 大塚 義一, 平井 崇
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 24-00119
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     鉄道近接工事において,軌道への影響の早期発見,迅速な対応のために軌道のセンシングが行われている.しかし,工程の進捗に伴ってセンサを移設した場合,関係者間で移設に関する情報共有が必要だが,これを怠れば,現場で混乱が生じる可能性がある.そこで本研究では,センサデータをBIM/CIM 4Dモデルと関連付け,モデル上で設置位置・部材などのセンサの情報を一元管理し,工程情報を付与したBIM/CIMモデルとセンシングデータを関連付け,工程情報と連動してセンシングデータを可視化する4Dモデル・センサ施工管理(4DSCM)システムを開発した.本システムにより,センシングデータと施工の関連性を視覚的に把握し,システム上の情報共有により,センサの移設に的確に対応し,施工管理を効率化できることを検証した.

  • 堀江 進, 中前 茂之, 羽鳥 剛史, 服部 達典, 池田 一郎, 池田 亮介
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00062
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     現在,建設分野においては,技術を伝えるベテラン技術者や,新たな技術を習得する若手技術者の人材不足が深刻な課題となっており,橋梁分野においても技術力の低下が懸念されている.本研究では,地方建設会社に従事する技術者を対象に,時代背景を踏まえて元請・下請の技術水準の変化を調査した.その結果,2000年代以降に国による公共事業の大幅削減を契機として,11年間にわたる公共事業衰退期における技術伝承は,元請・下請ともに,その前後10年間とは異なる様相を呈していた.本研究では,技術伝承の頻度と技術水準について因果分析を行い,地方建設会社における橋梁技術伝承パターンの時代比較を考察し,今後の検討課題を整理する.

  • 鷲見 孝明, 鶴成 悦久, 山本 健太郎, 佐藤 啓治, 小島 正道
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00133
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,建設産業の担い手確保を目的として実施される職業体験イベントが,入職促進にどのような効果をもたらすかを評価したものである.大分県立高等学校建設系学科等の1年生および3年生を対象としたアンケート調査を実施し,調査結果に基づいて多変量解析を行った.その結果,高等学校在学時の職業体験が豊かな生徒ほど建設産業への入職志向が高い傾向が明らかとなった.本研究により,職業体験イベントが建設産業への入職促進手段として有効であることが示された.

環境と資源
論文
  • 櫛田 陽明, 山下 雅大, 古市 昌浩, 中久保 豊彦, 山崎 宏史
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00112
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     日本国内における生活排水処理施設整備の概成に向けて発生が予想される既設浄化槽からの廃棄物について,実測値に基づき,廃棄物の処理方法を変化させた場合の廃棄物発生量及び温室効果ガス(GHGs)排出量のシミュレーション解析を行った.既設単独処理浄化槽349万基分の廃棄物発生量は43,357千t,再生利用量は33,932千tと算出され,最終処分量の削減には廃プラスチック類の再生利用が有用と示唆された.GHGs排出量は廃プラスチック類の処理方法を埋設から焼却へ変更すること等により5,331千t-CO2eqから6,816千t-CO2eqと大きく変化し,スラブ打設に用いる資材由来のGHGs排出量が90%程度を占めたことから,GHGs削減には資材の使用量の抑制とともに,FRPの再生利用が必要と考えられた.

  • 山本 匠吾, 花本 征也
    2025 年81 巻10 号 論文ID: 25-00140
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/20
    ジャーナル 認証あり

     下水道整備状況の異なる全国9河川において,医薬品のアセトアミノフェン及び比較対象のクロタミトンの現地調査を月1回の頻度で2年間実施した.1人当たりの負荷量に関して,クロタミトンは河川水と下水処理水が同程度の値を示したが,アセトアミノフェンはほとんどの河川で下水処理水の2倍を上回り,特に下水道普及率が低い3河川では,下水処理水の10倍を上回った.対象河川水におけるアセトアミノフェンの1人当たりの負荷量は,集水域の浄化槽利用人口割合と10%水準で有意な正の相関を示した.アセトアミノフェンの排出原単位は浄化槽(対象流域の平均値)が下水処理場(文献値の平均値)よりも17.1倍高く,アセトアミノフェンの環境リスク管理において浄化槽排出原単位を考慮する必要性が示された.

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