2025 年 81 巻 10 号 論文ID: 25-00064
本研究は,トリップチェイン全体の効用を最大化する旅行者の意思決定を明示的に表現した,新たな観光周遊行動モデルを提案する.提案モデルは,オリエンテーリング問題に類似した構造に,旅行者の異質性を表す誤差項を導入することにより,トリップチェインの選択確率を定義可能にしたものである.本研究は,提案モデルに従うトリップチェインを求めるためのヒューリスティックアルゴリズムと,モデルに含まれる未知パラメータの推定手法も開発する.さらに,訪日外国人流動データであるFF-Dataに対して提案モデルを適用し,パラメータ推定とモデルの妥当性の検証を行った.その結果,提案モデルは,近視眼的なNested Logitモデルと比較して,観測データへの高い適合度を示すことが確認された.