2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16004
地球規模の気候変動により,短時間強雨の年間発生回数は増加し,大規模な豪雨災害が頻発し,現状の河道計画での対応の限界が露わとなった.一方で,生物多様性の保全や河川整備上の環境への配慮も重要である.治水と環境の両立という河川管理での課題について,氾濫流の制御技術を活用した流域治水手法に着目した.平成29年7月九州北部豪雨で大規模な浸水被害を受けた桂川流域を対象に,日本の伝統的な氾濫流の制御技術や遊水地を活用した流域治水手法について数値シミュレーションによる検証を行った.その結果,これらの伝統技術は氾濫流の制御に貢献し,被害の拡大を防ぎ,避難可能時間を大きく引き伸ばす効果があることが確認された.氾濫流の制御による流域治水は,河道改変の影響が小さく,環境上重要な河川への治水対策として効果的である.