2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16011
昨今の気候変動などの影響により富山県でも洪水災害が頻発しており,気候変動への適応や流域治水の推進が求められている.本論文は,富山県の1級河川である小矢部川,神通川,常願寺川を対象に5kmメッシュの詳細な将来気候データであるd4PDFデータを用いて,洪水氾濫被害額の算定および各種適応策の費用便益分析を行ったものである.適応策はグリーンインフラや緩和効果の観点から,河道内植生伐採と田んぼダムに着目している.洪水氾濫解析および費用便益分析の結果,対象河川においては田んぼダムが効果的であると評価され,特に小矢部川では実施率50%で費用対効果が12.6,100%で14.9と高い効果を示した.河道内植生伐採も効果のあることが確認されたが,今後実施費用を抑えるため効果の高い個所での植生伐採の実施や,処理・運搬費用の取り扱いを考えていく必要がある.