2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16044
鳥取県では2023年8月15日に台風7号に伴う線状降水帯が発生し,千代川流域の佐治川では河岸侵食に伴う被害が発生した.一方,溢水による浸水が懸念されたが被害を免れた集落もあった.それは,直上流部の湾曲部に位置する幅広の谷底部が遊水・遊砂効果を発現し,直下の集落の浸水被害を防いだ可能性が考えられた.本稿では,中山間地の急流河川における幅広の谷底部を河道の拡幅部として捉え,拡幅部への貯留や堆砂が下流へ及ぼす影響を検証し,拡幅部の遊水・遊砂効果を整理することを目的とし,平面2次元河床変動解析を実施した.その結果,中山間地における拡幅部では,大きな粒径の巨礫も含んだ幅広い粒径の土砂を堆積させ,下流への土砂流出量を低減させ,水位上昇を抑制する効果があることが分かった.