2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16075
本稿では風が洪水伝播,降雨流出過程に与える影響を数値実験で検証した.浅水流方程式とそれに基づく流出・氾濫モデルを適用した.5mと250m解像度の仮想領域で仮想及び観測の風を利用して洪水伝播波形,速度,範囲がどのように変化するかを検討した.結果として,進行方向の風により洪水伝播は加速し,範囲も広がるが,無風状態と比べて各地点で水位が上昇するか下がるかは位置によること,250m解像度の計算も一般的な傾向としては5m解像度と同じようになることを示した.また,実測風により洪水流の移動方向が変化することも明確にわかった.次に,荒川流域の令和元年東日本豪雨時の洪水についても風の有無のもとで流量計算し,変化を見定めた.結果として,実測風の有無では,わずかな流量差があるだけであった.他方,風速が2倍,5倍となるにつれて流量変化が大きくなった.