2025 年 81 巻 17 号 論文ID: 25-17208
開放性沿岸域の流動は,波浪・風・潮汐・内部波・外洋からの海流や中規模渦の波及など様々な外力の影響を受ける.本研究では,典型的な開放性海岸である鹿島灘に位置する波崎海洋研究施設観測桟橋において2023年夏季に約2週間の現地観測を行った.観測期間中,寒冷前線を伴う低気圧通過後に風向が変わり,その後数日間岸に沿う南下流が強まる現象が確認された.この南下流は日周変動しており,その周波数特性,JCOPE2M再解析データから見積もられる位相速度とロスビーの内部変形半径などから,陸棚斜面上で励起された日周期内部潮汐が沿岸に捕捉され,岸を右手に見て沿岸方向に進行する近慣性内部ケルビン波に発達したものと考察された.この内部ケルビン波は,静穏期の砕波帯周辺の流動や環境に対して強い影響を与えていることが示唆された.