2025 年 81 巻 2 号 論文ID: 24-00118
我が国では明治時代以降の急激な近代化に伴い,海岸侵食の顕在化が指摘されてきた.一方で,貴重な海浜空間の価値が再認識され,全国で海岸保全事業が実施されてきた.1990年頃以降,個別の海岸地形に関する報告があるものの,広域的な海岸線位置の変化特性については把握できていない.本調査においては,地形図の比較に基づき関西地方の砂礫海岸線位置の変化特性を解析した.その結果,海岸侵食の対策工が設置されている区間では海岸線が前進(単位幅当たり0.21m/年)しているのに対し,対策工の設置がない区間では海岸線が後退(0.23m/年)していた.河川流域からの土砂供給ポテンシャルは近年増加傾向にあると推察されるが,砂礫海岸の変化速度はやや後退傾向にあるため,継続的に海岸侵食対策を実施する必要性が示唆された.