2025 年 81 巻 4 号 論文ID: 24-00140
救急搬送時間が年々増加傾向にある中,道路に求められる医療施設アクセス機能はナショナルミニマムを保障する観点から重要である.しかし,国土交通省の道路事業評価では定型化された医療アクセス評価手法は示されていない.計測事例は複数報告されているが,その大半が経過時間と死亡リスクの目安を示したカーラー曲線を用いているため,我が国の救急搬送データを用いて搬送時間と救命率の関係性を推定する必要がある.そこで,本研究は国内救急搬送の個票データ(救急搬送人員データ・ウツタインデータ)を用いて,疾患別に搬送時間と救命率の関係性を推定し,道路整備による救命率向上便益を試算した.そして,試算結果をふまえてナショナルミニマムを確保する観点から便益計測の意義を整理し事業評価における取り扱い方針を示した.