抄録
セメント硬化体に対する水蒸気の移動を対象とした新たな有効拡散係数推定モデルを提案した.提案モデルは,試料内部の水分状態に乾燥領域と飽和領域からなる2層モデルを仮定し,飽和した試料ならびに水を対象とした等温熱重量分析の結果より評価される脱水速度の相対的関係を利用して定式化される.提案モデルより評価される有効拡散係数はカップ法に準じた実験方法より得られる結果と物理的に等価であると考えられる.各種の水セメント比(W/C)で配合された硬化セメントペーストに対する実測結果を提案モデルに導入した結果,W/C=0.3~0.5で有効拡散係数の値は5.31×10-6~8.99×10-6[m2/s]となった.