土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
67 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
和文論文
  • 上原子 晶久, 岩城 一郎, 鈴木 基行
    2011 年 67 巻 3 号 p. 333-350
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
     汎用有限要素解析コードを用いて,塩害劣化の著しい実道路橋PC上部工の耐荷性状を評価することを試みた.解析では,本橋に対する既往の調査研究結果に基づき,PC鋼材の平均質量減少率を仮定し,鋼材腐食による機械的性質の低下を考慮した.対象構造物の経年的な構造性能の低下を把握するのみならず,ケーススタディーとして上部工において劣化の顕在化する桁の位置が構造性能に及ぼす影響についても議論した.その結果,対象構造物は供用開始後約32年で約24%程度の終局耐力の低下を示した.さらに,PC鋼材の腐食が過度になると,終局破壊モードがコンクリートの圧壊から鋼材破断に変化することによって,変形性能が著しく低下する可能性を示した.一方で,劣化した桁が上部工の片側に偏重すると構造性能上,不利になることを明らかにした.
  • 杉山 隆文, 志村 和紀, 畠田 大規
    2011 年 67 巻 3 号 p. 351-360
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
     高解像度を実現するX線CTにより,AE剤やAE減水剤を使用したモルタルの空気量,空隙径の分布および気泡間隔などの空隙構造を三次元空間で定量化した.本研究では,マイクロフォーカスX線管を通じて,直径が12mmの普通モルタルおよびフライアッシュモルタルを透視した.そして,三次元空間に散在する空隙を1画素の寸法を12μmとして抽出し,この空隙を等価空隙球へ置換することで,空隙径分布を計算した.空気量を2水準に変化させたAEモルタルは,フライアッシュの有無にかかわらず,直径が40~50μmの空隙径をピークとして300μmにまで及ぶ空隙分布であること,さらに気泡間隔係数は113~137μmであることを明らかにした.また,そのときの耐凍害性を凍結融解試験結果から検証した.
  • 宇治 公隆, 大野 健太郎, 中嶋 彩乃, 國府 勝郎, 清水 和久
    2011 年 67 巻 3 号 p. 361-373
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
     部材厚200mm以下の薄肉鉄筋コンクリート(RC)部材は,土木学会標準示方書による曲げひび割れ強度式の適用範囲外であり,精度の高い曲げ耐力算定手法の確立が求められている.本論文では,薄肉部材の4点曲げ試験を行い,曲げ破壊挙動を実験的に把握し,コンクリートの引張軟化特性を考慮して曲げ耐力算定手法を検討した.その結果,本研究で取り上げた供試体条件において,部材厚70mm以下の部材では,鉄筋が力学的に機能せず破壊に至り,部材厚80mm以上では,通常のRC部材として機能することが明らかとなった.また,各部材厚に対応した破壊エネルギー試験より,引張軟化曲線の形状は部材厚の違いにより変化することが確認され,新たに提案した2直線軟化モデルを耐力算定に適用した結果,耐力算定精度が向上することを確認した.
  • 内海 秀幸
    2011 年 67 巻 3 号 p. 374-383
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
     セメント硬化体に対する水蒸気の移動を対象とした新たな有効拡散係数推定モデルを提案した.提案モデルは,試料内部の水分状態に乾燥領域と飽和領域からなる2層モデルを仮定し,飽和した試料ならびに水を対象とした等温熱重量分析の結果より評価される脱水速度の相対的関係を利用して定式化される.提案モデルより評価される有効拡散係数はカップ法に準じた実験方法より得られる結果と物理的に等価であると考えられる.各種の水セメント比(W/C)で配合された硬化セメントペーストに対する実測結果を提案モデルに導入した結果,W/C=0.3~0.5で有効拡散係数の値は5.31×10-6~8.99×10-6[m2/s]となった.
  • 川崎 佑磨, 北浦 美涼, 友田 祐一, 大津 政康
    2011 年 67 巻 3 号 p. 384-395
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
     近年,コンクリート中の鉄筋腐食過程について早期の段階で点検時に評価できることが重要となっている.そこで本研究では,基礎的実験として鉄筋腐食の促進実験である電食実験を行い,その後,浸漬乾燥繰返し実験を行い,それぞれの実験にアコースティック・エミッション(AE)法を適用した.その結果,コンクリート中の鉄筋腐食によるAE発生と腐食生成物の膨張圧に伴うコンクリート中のひび割れによるAE発生の2つの時期が確認された.この2つの時期についてAE波形解析を行い,鉄筋腐食に伴うひび割れの発生位置と識別が同定できる可能性が示された.さらに,走査型電子顕微鏡(SEM)による鉄筋の観察を行い,コンクリート中の鉄筋腐食の状態を確認した結果,鉄筋腐食過程をAEモニタリング技術により早期に評価する妥当性が明らかになった.
  • 岡崎 慎一郎, 岸 利治
    2011 年 67 巻 3 号 p. 396-410
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
     微小空隙中における液状水の流動は,壁面からの摩擦の影響を受けることにより,特徴的な挙動を示す.本論文では,粘塑性流体モデルに用いられる降伏値の概念を準用しつつ,微小空隙中の液状水の流動に対して,液状水の流動に必要な始動動水勾配および流動を停止させる停止動水勾配の概念を新たに導入することを提案した.さらに,要素実験の結果から構築した粘性挙動モデルを組み合わせることによって,微小空隙中の液状水の流動を記述する工学モデルを構築し,液状水で飽和したコンクリートの透水実験の結果を再現することに成功した.
  • 桜田 道博, 森 拓也, 大山 博明, 関 博
    2011 年 67 巻 3 号 p. 411-429
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
     設計基準強度が120N/mm2の高強度繊維補強モルタルをPC構造物に適用するため,各種材料試験,PCはり供試体による曲げ載荷実験およびせん断載荷実験を行った.材料試験では高強度繊維補強モルタルの圧縮強度,引張強度,ヤング係数,クリープ係数,乾燥収縮ひずみなど,PC構造物の設計に必要な材料特性を明らかにした.一方,曲げ載荷実験およびせん断載荷実験では,PCはり供試体の曲げひび割れ発生モーメント,曲げ耐力およびせん断耐力などの構造特性が既往の設計方法で安全側に評価できることを確認した.これらの結果から高強度繊維補強モルタルのPC構造物への適用は十分可能であることが示された.
  • 内藤 英樹, 林 弘, 齊木 佑介, 山洞 晃一, 古賀 秀幸, 鈴木 基行
    2011 年 67 巻 3 号 p. 436-450
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/20
    ジャーナル フリー
     模擬ひび割れを導入した無補強コンクリート,繊維補強コンクリート,および鉄筋コンクリート供試体の凍結融解試験を行った.無補強コンクリートと繊維補強コンクリートの実験結果より,材料としては高い凍結融解抵抗性を有するコンクリートを使用した場合でも,模擬ひび割れを導入した供試体では,ひび割れ部に浸入した水の凍結膨張圧によってひび割れが大きく開口・進展することが示された.その一方で,繊維長の長いポリプロピレン繊維は大きなひび割れの開口にも繊維の架橋を保つことから,コンクリート片の落下防止の観点からは有用と考えられた.そして,鉄筋コンクリート供試体の検討では,軸方向鉄筋の拘束によって凍結融解に伴うひび割れの進展を大きく抑制できることを確認した.
  • 緑川 猛彦, 武田 三弘, 小山田 哲也, 阿波 稔
    2011 年 67 巻 3 号 p. 451-461
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/20
    ジャーナル フリー
     コンクリート構造物の塩害対策の一つとして,表面含浸材による劣化防止工法が採用されることがある.本研究は,表面含浸材を塗布したコンクリート供試体の長期暴露試験を通して,表面含浸材を塗布したコンクリートの塩化物イオン浸透性状,見かけの拡散係数等について検討したものである.本報告は,試験開始から5年目までの検証結果を取り纏めたものであり,これまでの検討により,暴露5年後においても表面含浸材の効果が十分継続していること,その効果は強度の低いコンクリートに対してより有効であること等が明らかになった.
  • 内藤 大輔, 五十嵐 心一, 柴山 舞
    2011 年 67 巻 3 号 p. 462-473
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/20
    ジャーナル フリー
     セメントペースト供試体の電気伝導率を測定し,反射電子像の画像解析により明らかにされた粗大な毛細管空隙の空間構造の特徴との対応性を調べた.粗大な毛細管空隙構造は系全体の空隙量およびその連結性を反映し,その空間統計学に基づく特徴量は電気伝導機構と関係づけられる.また,鉱物質混和材の種類によって電気伝導率の低下の傾向が異なり,粗大毛細管空隙の空間構造と物質透過性の相関性が低下する.これは微細な毛細管空隙の連結性が混和材混入により低下するためと考えられる.
和文ノート
  • 川端 雄一郎, 小野 大輔, 李 シンシュ, 川崎 悦子, 岩波 光保, 加藤 絵万, 上野 直広, 徐 超男
    2011 年 67 巻 3 号 p. 430-435
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,暗視野下においてコンクリートのひび割れを検出する技術を開発するため,応力発光体をシート化した応力発光センサに着目し,応力発光センサによるひび割れ検出に関する基礎的検討を行ったものである.応力発光センサにより暗視野下においてもコンクリートのひび割れを可視化・検出することができた.また,コンクリートが引張軟化域となり,コンクリートに微細ひび割れが生じた時点で応力発光が生じていると考えられた.また,漸増載荷試験で求めた各荷重サイクルの荷重-CMOD関係におけるヒステリシスの面積と応力発光強度の時間積分値には高い相関関係があった.これに基づき,コンクリートのひび割れ発生・進展による応力発光センサの応力発光機構について考察を行った.
feedback
Top