2014 年 70 巻 1 号 p. 118-133
本研究では,高品質セメント系材料の持つ特徴的な遮塩性能を再現することを目的とし,微小空隙に着目した塩化物イオン移動モデル・液状水移動モデルの高度化を図った.感度解析によって抽出された既往モデルの適用限界に基づき,塩化物イオン経路に関する限界となる空隙径を設定すると共に,液状水に対して壁面から作用する摩擦抵抗を考慮することで,緻密な空隙構造を持つセメント硬化体について長期で液状水移動が停滞し,塩分移動が抑制されることを再現可能とした.モルタルを用いた塩水浸せき試験によって,低水セメント比における高い遮塩性能を精緻に測定するとともに,修正モデルを用いることで緻密なセメント硬化体中の塩分浸透挙動を良好に追跡可能であることを示した.