2020 年 76 巻 1 号 p. 1-20
現在,コンクリートの引張側の応力ひずみ曲線を求める手法として直接引張試験装置により引張試験を行う方法が数多く提案されているが,いずれの試験でも打ち消すことが困難な曲げモーメントの発生により試験片の断面にひずみ勾配が生じるために推定精度が低下するという課題がある.曲げ試験により測定した荷重変位曲線を基に逆解析を行う方法も提案されているが,解析を行う際に試験条件を細部まで再現する必要があるなどの課題がある.本研究では,直接引張試験時に試験片の一つ以上の切断面で合力及びひずみ分布を観測し,それらの時系列データから応力ひずみ曲線を推定するための逆推定理論に基づく試験方法を提案する.この手法を数値解析で再現し,載荷過程で大きなひずみ勾配が発生しても正確に応力ひずみ曲線を推定できることを確認した.