2020 年 76 巻 2 号 p. 130-143
コンクリートダムでは,セメントの水和熱に起因して発生する温度応力の制御が重要な課題であり,古くから種々の研究が行われてきた.とりわけ,近年の解析手法の発展により,設計・施工段階における温度応力については,詳細な検討が行えるまでになった.一方,単位結合材量の少ないダムコンクリートにおいても,セメントの種類によっては一般のマスコンクリートと同様に無視できない自己収縮ひずみが生じることが明らかとなっている.本研究では,重力式コンクリートダムの施工時の温度応力における自己収縮ひずみの影響に関し,幾つかのダム用セメントを用いた場合について解析的に検討を行った.その結果,自己収縮ひずみがダム施工中に発生するひび割れの要因となることが明らかとなった.