2020 年 76 巻 4 号 p. 306-314
コンクリートを粉砕して得られる粉末を圧縮成形することで,十分な強度を有する成形体が形成される機構の理解と,コンクリートやセメントペーストの高圧下での変形機構を理解するため,溶脱処理したセメントペーストや水酸化カルシウム,合成C-S-Hの成形体を対象に三軸試験を実施した.その結果,水酸化カルシウムは飽和状態では,乾燥状態と比較して剛性や強度が大幅に低下すること,合成C-S-Hは拘束圧の増加に伴い剛性が低下するが,含水率の影響が小さいことを確認した.得られた結果に基づいて,コンクリート粉末の圧縮成形においては,まず変形しやすいC-S-Hが圧出されて,水酸化カルシウムの構造体が形成されること,圧縮成形時に水を加えると,この構造体が変形しやすくなることで圧縮変形が促進される,という仮説を提示した.