2021 年 77 巻 3 号 p. 92-107
UHPFRCにより既設部材の補修・補強を行う場合,UHPFRCの収縮が既設部材により拘束されて全厚にわたって引張応力が生じ,ひび割れが発生する可能性がある.本論文は,UHPFRCを用いた既設部材の補修・補強において,基礎的といえるこれらの課題を検討したものである.検討では,既設のコンクリート床版上面の打替え・増厚に用いることを主たる目的として開発したUHPFRCの引張特性を把握するために,直接引張試験を実施した.また,若材齢時に拘束を受けるUHPFRCの挙動を把握するためにTSTMを用いた収縮拘束試験を実施した.検討の結果,ワラストナイトの混入によるひび割れ発生強度の向上と,若材齢UHPFRCの粘弾性挙動による拘束応力の緩和により,若材齢時の拘束によるひび割れ発生に対して大きな余裕があることが分かった.