2021 年 77 巻 3 号 p. 78-91
海水中の多種イオンが,セメント硬化体の塩化物イオンの浸透と固相の変質に及ぼす影響を把握するために,海水よりもイオン濃度が高い共存イオンが異なる4種類の溶液で促進的に浸せき試験をした.モルタルの塩化物イオン浸透は,1736日間の浸せき試験の結果から,NaCl+MgSO4溶液では促進され人工海水では抑制される結果を得た.これは,モルタル表層に生成する二水石こう,エトリンガイト,ブルーサイト,アラゴナイトの生成,およびCSHの溶脱が影響していると考えられた.コンクリートについては,1008日間の浸せき試験の結果から,浸せき溶液種類に関わらず,コンクリート表層10mmまでの領域に水酸化カルシウムが存在せず,溶脱による空隙構造の変化が塩化物イオンの移動に影響を及ぼしていると考えられた.