抄録
函館港内における水質と流動の変動特性について,現地観測及び数値解析の両面から検証した.港湾全域を対象とした現地観測では潮位,栄養塩,溶存酸素量,化学的酸素要求量,濁度に関して測定を行った.その結果,下げ潮時において潮流流動により巻き上げられた底質によって,海中の被酸化性物質の濃度が高まり,海底付近の酸素消費が加速することを示している.また,港奥海域に蓄積するリンは,函館湾に注ぐ流入河川から供給されていることを明らかにしている.物質循環に基づく生態系モデルを考慮に入れたマルチレベルモデルにより,函館港内における水質の日変動を推定した結果,定性的ではあるが,現地観測の結果を概ね良好な結果で再現できることを示している.