抄録
東京湾は典型的な閉鎖性内湾であり,夏季には強い日射,淡水の流入により成層が発達し,鉛直方向の物質輸送が抑制され,底泥が酸素を消費し,湾奥底層付近に貧酸素水塊が発生する.また,これまでの周辺地域の開発,生活排水などによる栄養塩等の負荷が大きく,湾央,湾奥底層に有機物が堆積しており,貧酸素水塊が発生し易い状況となっている.そこに北風などの外力が与えられると,青潮の発生で知られるように貧酸素水塊が水表面まで湧昇し,水生生物に多大な影響を与える.そのため,どのように貧酸素水塊が発生・輸送・消滅しているかを理解することは,東京湾における水環境を考える上で重要である.